工場レイアウト図 書き方 完全ガイド(実例図付き)
目次
工場レイアウト図 書き方 完全ガイド(実例図付き)
要約
工場レイアウト図の書き方に関する、ポイントや注意点、アイデア、事例などをまとめてあります。
この記事は、
- はじめて工場レイアウト設計の担当者になったが工場レイアウト図の書き方が分からないんです…
- 工場レイアウト図を経験と勘で書いていますが、できるかどうかとても不安です…
- 工場レイアウト図の最適な図が わからないので困ってます…
- 工場レイアウト図の書き方の実践的で確実な手法を教えてほしい!
- 工場レイアウト図のフリーソフトを教えてください。
といったような方へ向けてまとめています。
あなたは、この記事を読むことによって、
- 工場レイアウト図の書き方のポイントを全て知ることになります。
- 工場レイアウト図の失敗を事前に回避できます。
- 足踏み状態から前進していくことができます。(既に工場レイアウト図を書き始めて、停滞中の人)
私は、これまでに計11棟の工場や倉庫のレイアウト設計に携わってきました。
その過程で知り得た工場レイアウト図の書き方のポイントなどをを、わかりやすく説明して行きたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いします!
まずは、既にご存知と思いますが、念のため、工場レイアウト図について、ざっくり説明しておきます。
(知っているという人は読み飛ばしてください。)
工場レイアウト図とは
工場レイアウト図とは、工場内での設備、機械、作業スペース、材料、作業者の配置などを図で、視覚的に表現したものです。
工場レイアウト図から、物の流れ、作業スペース、設備の配置等の、改善箇所などが把握でき、また工場を全体的に把握することができます。
それにより、工場の生産性、効率性、安全性を最適化するために使用される重要な資料です。
たとえば、
私が、以前コンサルした工場では、現存の工場の詳細なレイアウト図がなく、工場の実態を正確に把握できず、改善への取り組みが大きく遅れてしまう事態になっていました。
そこで、工場レイアウト図の作成を一からまとめ直した結果、多くの改善点を見つけることができたんです。
このように、工場レイアウト図というものは、非常に重要なものです。
工場レイアウト図の目的
工場レイアウト図の主な目的は下記の通りです。
- 工場を全体的に把握するには工場レイアウト図から物の流れ、作業スペース、設備の配置等の実態を理解することができる。
- 工場の実態把握により作業改善、物流改善を問題点が分かってくる。
- 既設工場レイアウト図は、レイアウト変更・改善の資料となる。
- 工場の増築・新工場の建設の基礎的な資料になる
製造現場の直接観察では、狭い範囲しかできません。
工場レイアウト図では、工場を俯瞰的に全体的に、把握できます。
工場レイアウト設計では、全体的に物事を把握することが、非常に重要なことです。
工場レイアウト図 フリーソフト
工場レイアウト図を効率的に書くには、パソコンで作図ソフトを使って書きます。
費用の掛からないフリーの作図ソフトがあります。
いくつかのソフトを紹介していきます。
- エクセル系
- CAD系
工場レイアウト図 エクセル系
Excel
一般に普及しているMicrosoft OfficeのExcelがフリーで使用できます。
Excelで簡単なレイアウト図を作成できます。
Excelは、CADオペレーターでなくても、一般の人でも使えます。
但し、基本的にエクセル方眼に沿った矩形、円形のシンボルの配置しかできません。
オフイスのレイアウト図には、適用できますが、製造工場のレイアウト図には、簡略すぎて適していません。
作図例
出典:「オフイスレスキュー119」より
Excelでの書き方については、次のサイトをご覧ください。
Excel DE 間取り図
Excelを使って間取り図がカンタンにつくれるソフトで「Excel DE 間取り図」があります。
このソフトは、オフイスのレイアウト図にも適用できます。
出典:京都De不動産より
Excel DE 間取り図での書き方については、次のサイトをご覧ください。
工場レイアウト図 CADソフト
CAD(キャド)とは、「Computer Aided Design」の頭文字から取った略語です。
コンピューターを用いて設計をすることができるツールです。
もともと設計現場で手書きしていた図面をデジタル化し、コンピューター上で再現したものがCADです。
CADは、ソフトウェアの主な機能によって、次の2種類に分けられます。
- 2DCAD
- 3DCAD
2DCADとは
2DCADは、2次元(2D)データの製図を行うCADです。
紙など平らな場所に表現する製図を、コンピューターを用いて設計することができます。
手書きに比べて簡単に修正や書き直しができる点を活かし、様々な設計に使われています。
工場レイアウト設計の過程で、レイアウト図の変更・修正が頻繁に行われますので、その場合2DCADソフならば、迅速、効率的に対応できます。
3DCADとは
3DCADは、3次元(3D)データーの作成を行うCADです。
平面で行っていた2次元図面(2D)をコンピューター上で3次元に拡張したもので、コンピューター上の仮想空間で立体を構築していきます。
モデルを立体的に作成することにより、具体的なイメージを掴みやすいメリットがあります。
また、3Dモデルを一つ作るだけで、平面図や断面図といった複数の図面やパースを自動的に作成してくれるのも特徴です。
3DCADは、2DCADより作図操作が複雑になり、スキルが必要です。
通常の工場レイアウト図では、2DCADの作図で充分です。
工場レイアウト図 2DCAD フリーソフト 3選
費用の掛からない2DCADフリーソフトの3選です。
Auto CAD
Autodesk社が提供する2DCAD「Auto CAD」です。
「Auto CAD」はCADソフトの中でもトップシェアを占めており、世界中で使用されています。
日本でも、建築・土木・機械分野の汎用CADとして広く使われているソフトです。
シェア率が高いので、他のCADソフトとデーター共有がしやすいメリットがあります。
「Auto CAD」には、無料体験版が提供されています。
この無料体験版はAuto CADをインストールしてから30日間、無料で全機能を使用することができます。
詳しくは次のサイトをご覧ください。
私が、AutoCADで作図した実例図です。
BricsCAD
「BricsCAD」は3DCAD機能が備わった世界品質の互換CADです。
2DCADの機能に関しては、AutoCADとの互換性が高く、利便性の高さが評価されています。
「BricsCAD」は無料体験版の「BricsCAD Ultimateトライアル」が提供されています。
この無料体験版はインストールしてから30日間、無料で全機能を使用することができます。
詳しくは次のサイトをご覧ください。
Jw_cad
「Jw_cad」は、商用利用を含め無料で使うことができる2DCADです。
開発に建築士が関わっているため建築分野に便利な機能が多く、建築汎用CADとも呼ばれています。
建築業界では、設計ツールとして最も普及しているCADソフトとも言われています。
完全無料のフリーソフトである上に機能も豊富で使いやすく、ネット上のサイトに図形や設備などの無料ダウンロードデータが豊富にあるのも、「Jw_cad」が広く普及している理由のひとつです。
「Jw_cad」には建築系の専用コマンドが揃っているので、簡単に壁や柱を作成できます。
紙に製図していたような感覚で作図ができるので、グリッドが引きやすくなっており、平面図からパースを書くのも素早く簡単に行えます。
2DCADで工場レイアウト図を書くには、少ない作図機能で書くことができます。
CADソフトのチュートリアルで練習することにより、初心者の方でも、短期間で書けるようになります。
詳しくは次のサイトをご覧ください。
私が、コンサルしたクライアントで、技術者でなく品質管理、生産管理に所属の担当者の方が、短期間で2DCADの使い方をマスターし、工場レイアウト図の作成を行っておりました。
是非、工場レイアウト図を2DCADで書くことを、お勧めします。
工場レイアウト図 書き方
活用できる詳細な工場レイアウト図を書くには、2DCADで書く必要があります。
2DCADを使って工場レイアウト図の書き方を、詳しく説明して行きます。
工場レイアウト図の主な書き方の手順は下記の通りです。
工場レイアウト図 書き方手順
- 2DCADの初期設定
- 工場レイアウト図 間仕切図の作図
- 工場レイアウト図 製造エリアの作図
- 工場レイアウト図 間接部門の作図
- 工場レイアウト図 工場全体図の作図
- 工場レイアウト図 敷地全体図の作図
上記の手順について、一つずつ説明していきます。
2DCADの初期設定
工場レイアウト図で、壁、柱、機械設備、作業者の配置が分かりやすくするために、線色、線種、線の太さ、画層名などを初期設定で決めます。
下記の表が実例です。
工場レイアウト図 間仕切図の作図
最初に、工場レイアウト図のベースになる間仕切図を作成します。
工場を建設した建築、空調、電気、ユティリティー設備の業者からCADデーターをもらい、合成して作図します。
新たに作図することは、大変手間の掛かるため、効率を図るため、関連業者からのCADデーターを活用することです。
次の順序で作図していきます。
1.柱の配置
既設の工場レイアウト図の場合は、建築業者のCADデーターを使い作図します。
柱の内側は黒色で塗りつぶし(ハッチング)して、目立つようにします。
2.壁・間仕切の作図
壁と間仕切を作図します。壁の内側も黒色で塗りつぶし(ハッチング)にします。
3.ドア・シャッターの配置
ドア・窓サッシ・シャッターなどの建具を作図します。
建築業者のCADデーターを使い作図します。
4.トイレ・衛生設備の配置
トイレ、洗面台、給水機など衛生設備を配置します。
関連業者のCADデーターを使い作図します。
5.電気設備の配置
分電盤(トランス」)などの電気設備を配置します。
関連業者のCADデーターを使い作図します。
6.ユーティリティー設備の配置
コンプレッサー、真空ポンプなどのユーティリティー設備を配置します。
関連業者のCADデーターを使い作図します。
7.空調機設備の配置
空調機設備などを配置します。
関連業者のCADデーターを使い作図します。
次図が工場の間仕切図の作図事例です。
工場レイアウト図 製造エリアの作図
工場の間仕切図に、生産に関係するものを配置して、作業エリアの詳細レイアウト図を作図します。
詳細レイアウト図に記入すべき項目は次の順序で作図して行きます。
1.生産設備の配置
生産設備は、形状を現わす外形線図だけ作図し、内側は空色の塗りつぶし(ハッチング)にします。
2.付属設備の作図
生産設備につながるコンベアなど付属設備を配置します。
3.什器の作図
作業台、保管棚などの什器類を配置します。
4.作業者の配置
生産設備を操作している作業者を色分けして配置します。
5.仕掛品の配置
生産設備の近くに一時保管される仕掛品を配置します。
6.完成品の配置
一時保管される完成品を配置します。
生産ピーク時の保管必要スペースを考慮しておきます。
7.副資材の配置
生産設備に供給される材料や副資材を配置します。
8.物流機器の配置
フォクリフト、パレットなどを配置します。
9.作業通路の作図
作業通路、作業エリアのラインを作図します。
作業通路幅についてはこちらをご覧ください。
➡工場の安全通路の決まり
10.部屋名の記入
作業場の部屋名、作業エリア名を記入します。
「詳細レイアウト図」は設計図に相当し、種々の必要な設備、情報が描き込まれます。
次図が作業エリアの詳細レイアウト図の作図事例です。
工場レイアウト図 間接部門の作図
工場の間接部門に関連するものを配置して、間接部門の詳細レイアウト図を作図します。
間接部門は事務関係でなく、社員の生活に必要なアメニティー施設を考慮した詳細レイアウト図が必要です。
次の項目について作図して行きます。
1.玄関・エントランスホール
一般の工場にある、来客用の玄関・エントランスホールを作図します。
2.総務・経理部門
総務・経理の間接部門の部屋のレイアウトを作図します。
机・イス・事務機器・什器や応接コーナーなど作図して配置、必要スペースを確認します。
3.工場長室
個室になっている工場長室を作図します。
4.生産管理部門
製造工場の生産管理部門を作図します。
机・イス・事務機器・什器など作図して配置、必要スペースを確認します。
5.会議室
数か所に間仕切される会議室を作図します。
6.食堂・休息コーナー
広い床面積になる社員食堂・休息コーナー・アメニティー施設を作図します。
テーブル、イス、厨房設備を配置して、必要スペースを確認します。
7.社員ロッカー
社員人数分の社員ロッカー・シューズロッカーなど配置し、将来の増員を考慮しておきます。
8.トイレ・衛生設備
トイレ・衛生設備を関連業者のCADデーターを使い配置します。
9.部屋名の記入
部屋ごとに部屋名を記入します。
次図が間接部門の作図事例です。
工場レイアウト図 工場全体図の作図
次に、各部門のレイアウト図を合成して工場全体の「工場詳細レイアウト図」を作図します。
次の項目について作図して行きます。
1.間接簿門の配置
間接部門(総務・経理。生産管理)を配置します。2.
2.アメニティー施設の配置
アメニティー施設の食堂・休息コーナー・社員ロッカー・シューズロッカーなどを配置します。
3.製造工程の配置
各製造工程の生産設備を配置します。
4.エネルギー設備の配置
エネルギー設備の空調機設備・ユーティリティー設備・電気設備を配置します。
5.物流設備の配置
規模の大きな物流設備、立体自動倉庫などを配置します。
6.入出庫用トラックの配置
入出庫用のトラックを配置します。
トラックの回転軌跡を描き、入出庫の作業に影響がないか確認しておきます。
7.製造現場のアメニティー施設の配置
製造現場のアメニティー施設(休息コーナー、喫煙室、トイレ等)を配置します。
次図が工場全体の詳細レイアウトの作図事例です。
工場レイアウト図 敷地全体図の作図
次に工場棟が配置された「敷地全体図」を作図します。
敷地全体図は次の項目を順次作図していきます。
1.敷地の境界線・フェンス
敷地周囲の敷地境界線とフェンスを作図して、敷地の全体図にします。
測量された正確なCADデーターを建築業者から提供してもらい作図します。
2.工場棟・付属棟の合成
工場棟と付属棟の外形図を敷地全体図に合成します。
3入出庫用のトラックとヤード
入出庫用のトラックとヤードを作図します。
トラックの回転軌跡を描き、トラックヤードの必要広さや通路幅を確認しておきます。
生産がピーク時の必要スペースも考慮しておきます。
4.工場増設予定エリアの確認
将来工場が増設される必要エリア、増設方向を赤色の想像線で作図し確認しておきます。
5..社員駐車場
社員数を確認し、必要駐車台数の駐車場をライン入りで作図します。
将来増員分を考慮しておきます。
6.緑化エリア
工場立地法で定められている緑化エリアの必要面積を考慮して作図します。
7.調整池の作図
工場立地法で定められている調整池の必要面積を考慮して作図します。
尚、工場立地法については、地域により異なるため次のサイトで確認して下さい。
8.道路・ゲート
敷地周辺の道路を作図します。
表門、社員通用門、裏門のゲートを作図します。
9.方位
方向が分かる方位マークを敷地に作図します。
エリア毎に彩色のハッチングを作図して、見やすい図面に仕上げます。
次図が敷地全体図の作図事例です。
工場レイアウト シミュレーション
工場レイアウト案は、1案だけでなく3案ぐらい作成し、比較検討し最適案を選定する必要があります。
なぜなら、すべての要求事項を満足する案は難しく、一長一短の複数案になってきます。
複数案の比較検討に、レイアウトのシミュレーションが必要になります。
本格的なシミュレーションソフトは、高度な知識と高額な費用がかかります。
その全てをここにまとめることは難しいんです。
なので、ここではシミュレーションの紹介にしておきます。
工場レイアウト シミュレーションとは
工場レイアウト設計で、レイアウト案や、いろいろ条件を変えて検討して、最適なレイアウト案を選択する作業をシミュレーションといいます。
工場レイアウト図は、条件を変えて幾つかの代替案の作成し、最適なレイアウトを選択する場合、シミュレーションを行い判断することになります。
シミュレーション 机上計算
工場レイアウト設計では、描画ツールやCADといった設計のためのツールで設計し、Excelや机上計算で、ヒト・モノの動きを計算するというのが一般的です。
工場レイアウト設計の最終段階で、3案の代替案を作成し、比較・検討して最適を決定する過程で、定量的な項目は、机上計算で数値を算出して判断します。
これが、一種のシミュレーションに相当します。
工場レイアウト シミュレーション ソフト
机上計算のシミュレーションは、大変な工数を必要とし、また段取り替えや手待ち、見えない干渉を考慮することは難しくなります。
シミュレーション ソフトを用いて「バーチャル上でレイアウト設計案を試してみる」ということです。
バーチャル上ですから、現場を動かさずに動的な要素を考慮した最適なレイアウトを導き出すことができます。
シミュレーション ソフトにも様々な種類がありますが、多くのシミュレータはプログラミングが必要です。
そこで、条件設定だけで、シミュレーションの実行可能なソフトGD.findi(有償ソフト)があります。
複数の案をそれぞれシミュレーションにかけ、どれが最適な案なのかということが簡単に検証することができます。
詳しくは、GD.findiのサイトをご覧ください。
工場レイアウト シミュレーション 経済性
工場レイアウト案の評価で、重要な項目はレイアウト案の経済性です。
経済性の数値が、所定の数値に達していない場合は、投資額を見直して、経済性をよくする必要があります。
その経済性の計算には、次のExcel の表計算ソフトを使用することが便利です。
まとめ
工場レイアウト図が、詳細図として可視化されると、自分たちの職場がどのように計画され実施されるのか、関係者が非常に関心を抱きます。
関係者から具体的な改善点、要望などの意見が多く出てきます。
それを工場レイアウト設計に反映し、ブラシュアップして、貴方の工場の最適な工場レイアウト案になっていきます。
以上、「工場レイアウト図の書き方」を説明してきました。少しでもあなたのお役に立てたなら幸いです。
工場レイアウト設計で、あなたの工場が、より良い工場になりますように。
参考
工場の新設や拡張や模様替えで、工場のレイアウトを考える必要が出てきた場合、
まずは、下記の「やさしい工場レイアウト手法」のメール講座がおすすめです。
無料ですので、ぜひ活用してみてください。