工場の安全通路の決まり【通路幅は?目安何cm?照度は?等】 

工場の安全通路の決まり
⚠️ 2025年1月更新情報
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要約

工場の安全通路の決まりをまとめてあります。工場の安全通路の決まりを抜粋して簡単にまとめると下記のようなポイントがあります。

工場の安全通路の決まり【抜粋】

  • 工場通路幅は、80cm以上であること
  • 工場通路面の高さ1.8m以内に障害物を置かないこと
  • 工場通路面は、つまづき、すべり等危険のない状態を保持すること
  • 通路の通行を妨げない採光又は照明の方法を講じること
  • 避難経路を用意すること

この記事は、

  • 工場内のレイアウトを変えたいが通路幅をどのくらいにすれば良いか分からない…
  • 工場を増設拡張する際に、通路もより安全なものにしたいが何か規定はあるの?
  • 工場を新設するので、安全通路となる設計基準を知りたい…

といったような方へ向けて、まとめてあります。

あなたは、この記事を読むことによって、

  • 工場の安全通路に関する基準や規定(通路幅など)が分かります。

実際に、これまで工場や倉庫のレイアウト設計を計11棟行ってきた私が、その経験も踏まえながら説明していきます。ぜひ、参考にしてください。

工場の安全通路の決まり【通路幅は?目安何cm?照度は?等】

工場で発生する事故の25%は、通路で発生していると言われています。

工場内はもちろん、工場屋外も含めて、作業場所や通路の安全性は、効率化や生産性以上に重要です。なぜなら、作業員を守るためです。

効率や生産性は、会社・工場にとって追求し続けなければなりません。ですが、それよりも大切なのは、そこで働いてくれている作業者です。

先に安全性を確保した上で、効率や生産性を追求していきましょう。絶対に考える順番を間違えないようにしてください。

以降、工場の安全通路に関する決まり、規定、規則、法律を説明していきます。

この記事は、労働安全衛生規則(第二編 第十章 通路、足場等(第一節 通路等 第五百四十条〜第五百五十八条)に基づいてまとめています。

工場の安全通路とは

工場の安全通路とは、作業場に設けられる、安全が確保された通路のことです。安全通路を設けることは労働安全衛生規則で定められています。

労働安全衛生規則

第540条:事業者は、作業場に通ずる場所及び作業場内には、労働者が使用するための安全な通路を設け、かつ、これを常時有効に保持しなければならない。

引用元:労働安全衛生規則より

工場通路幅の決まり

工場内の通路の幅には以下の決まりがあります。

  • 用途に応じた幅を確保すること。
  • 機械間または設備間の通路幅については80cm以上にすること。

通路幅は80cm以上と定められていますが、これはあくまでもルール上の最低の通路幅の定義です。

たとえ80cmの通路であっても、もし安全性を保てないのであれば、それは安全通路とは言えません。作業者を危険に晒さないかを、きちんとシミュレーションし通路幅を決めるようにしてください。

(参考:労働安全衛生規則 第542条の1、第543条(→労働安全衛生規則へのリンクは記事末部にあります(以下同様))

フォークリフト通路幅

工場安全通路の色の決まり

通路の色を何色にという決まりはありませんが、工場内の通路を色で区切ることによって、安全性が高まります。

たとえば、下記のようなイメージですね。

通路と作業場の色を分ける例

工場の安全通路と作業場の色を分ける例

通路と作業場を色付きの線で区切る例

工場の安全通路と作業場を色付きの線で区切る

色で区切る以外にも、さまざまな工夫や取り組みを行い、通路や作業場所の安全性を向上させましょう。

工場通路の照明・照度の決まり

工場通路の照明・照度の決まりとしては、「通行を妨げない程度に、採光又は照明の方法を講じなければならない。」といった程度の決まりしか定められていません。

ですが、規定通り、通行を妨げない照度だとしても、薄暗く、作業の妨げになるようでは、事故につながる可能性が出てきます。

規定に従うことは必要ですが、重要なことは、自分(自社)の考えで、本当に必要となる基準を決めることです。

(参考:労働安全衛生規則 第541条)

工場通路の高さの決まり

工場通路の天井までの高さに決まりは特にありません。

ただし、「工場通路面の高さ1.8m以内に障害物を置かない」ということは定められています。障害物があれば、広い通路幅を確保しても意味がありませんからね。注意してください。

工場通路面の高さ1.8m以内に障害物を置かない決まりの図解

(参考:労働安全衛生規則 第542条の3)

避難通路の確保に関する決まり

避難通路は必ず確保するようにと定められています。具体的には以下の通りです。

  • 避難階(直接地上に通ずる出入口のある階)には、容易に地上の安全な場所に避難することができる2つ以上の出入口を設けなければならない。
  • 前項の出入口に設ける戸は、引戸または外開戸でなければならない。
  • 避難階以外の階については、その階から避難階または地上に通ずる2つ以上の直通階段またはスロープ(傾斜路)を設けなければならない(うち1つは、すべり台、避難用はしご、避難用タラツプ等でも可)。
  • 地上に通ずる直通階段またはスロープのうち1つじゃ、屋外に設けられたものでなければならない。

非常時はいつ発生するか分かりません。事前にしっかり対応しておきましょう。

(参考:労働安全衛生規則 第546条、第547条)

車両通行通路に関する決まり

人間が通行する通路と車両が通行する道が交差する部分は、特に注意が必要です。相応の対応をしておきましょう。具体的には下記のような措置をとるように決められています。

  • 監視人を配置する
  • 監視装置を設置する
  • 警鈴を鳴らす

車両は凶器です。十分に対策を施しておきましょう。事故が起こってからでは遅いです。

(参考:労働安全衛生規則 第550条、第554条)

架設通路に関する決まり

架設通路を設ける場合にも決まりがあります。具体的には、

  • 丈夫な構造であること。
  • 勾配は30度以下であること(階段または高さ2m未満を除く)。
  • 勾配が15度を超える場合は滑止め等を設けること。

など。

その他も、条件によって、手すりの設置や踊場の設置などが定められています。詳しくは、労働安全衛生規則をご確認ください。

(参考:労働安全衛生規則 第552条)

その他の安全通路に関する規定・法律・ルール

ここまでは、「労働安全衛生規則」の内容をもとに説明してきましたが、他にも通路に関しては、以下の規則にも目を通しておく必要があります。

  • 建築基準法
  • 消防法

通路に関する建築基準法施行令

工場に閉じない建物全般に関する「建築基準法」という規定があります。その中にも通路に関する決まりが定められています。主には以下のような条項があります。

  • 廊下の幅(第119条)
  • 直通階段の設置(第120条)
  • 屋外への出口(第125条)
  • 敷地内の通路(第128条)

建築基準法について、詳しくは下記から確認してください。

➡︎ 建築基準法施行令

通路に関する消防法

消防の視点で定められている通路に関する規定もあります。たとえば、「消防法 第二章 火災の予防 第8条の2の4」には下記のようなことが定められています。

  • 廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置されないようにすること。
  • 防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置されないようにすること。

消防法について、詳しくは下記から確認してください。

➡︎ 消防法

【2025年最新】改正のポイント

労働安全衛生法の最新動向

2024年4月の改正により、以下の点が強化されました:

1. デジタル機器使用エリアの通路基準

・ スマートフォン・タブレット使用エリアは通路幅120cm以上推奨

・ 「ながら歩き」防止の注意喚起表示義務化

2. 高齢者・障害者への配慮

・ バリアフリー対応通路の設置推奨

・手すり設置基準の明確化

3. 自動搬送装置(AGV/AMR)対応

・ 自動搬送ロボットとの共存エリアの安全基準

・専用レーンの設置推奨

業界別の追加ガイドライン

・食品製造業:衛生管理を考慮した通路設計

・電子部品製造業:静電気対策を施した通路材質

・物流倉庫:ピッキング作業を考慮した通路配置

工場内の安全通路幅違反の事例

工場内の安全通路幅違反の事例のイメージ
画像はイメージです(実際の事例とは関係ありません)

通路に限らず、工場には危険がたくさんです。特に工場で起きる事故の25%は通路で発生していると言われています。

以下は、実際にあった実例です。下記のような事態になることは絶対に避けなければなりません。

実際の通路幅違反の事例

事故は、鋼板の切断や加工を行っている金属製品製造会社の工場で発生しました。

それは、鋼板加工機械の横の工場内通路を作業者が通行していたときでした。レール上を走ってきた加工機械の制御盤と通路端に設置されていた消火器木箱の間に、作業者は挟まれてしまったのです。

そして、大変残念な結果となります。作業者は死亡してしまったのです。加工機械と消火器木箱の間の通路幅は規定の80cmに達していなかったそうです……

このようなことは絶対に避けなければいけません。

参考にした労働新聞社の記事は下記からアクセスできます。

➡︎【送検事例】通路の幅が80cmに満たず(労働新聞社)

工場安全通路チェックリスト【無料ダウンロード】

工場の安全通路を点検するための50項目チェックリストを無料配布しています。

チェックリスト内容(一部抜粋):

□ 通路幅は80cm以上確保されているか

□ 主要通路は2.5m以上確保されているか(フォークリフト使用時)

□ 通路面から1.8m以内に障害物はないか

□ 通路の照度は100ルクス以上あるか

□ 避難経路は2つ以上確保されているか

□ 通路と作業エリアの区別は明確か

□ 床面に段差やつまづきの危険はないか

□ 滑り止め対策は施されているか

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🚫 失敗例と対策

よくある失敗例10選と具体的対策

1. 通路幅の計算ミス

  • 失敗例:フォークリフト幅1.2mに対して通路幅1.5mで設計
  • 問題点:安全マージン不足で接触事故リスク大
  • 対策:最小でも車幅+90cm、推奨は車幅+120cm確保

2. 荷物のはみ出し未考慮

  • 失敗例:パレットサイズのみで通路幅を決定
  • 問題点:積載物がはみ出して実質通路幅が狭くなる
  • 対策:最大積載時の寸法+20%の余裕を見込む

3. 繁忙期の物量増加を想定せず

  • 失敗例:通常時の在庫量だけで通路設計
  • 問題点:繁忙期に仮置きが増えて通路が塞がる
  • 対策:ピーク時の150%の物量を想定した通路確保

4. 通路の色分け・標示なし

  • 失敗例:床面に何も標示せず運用開始
  • 問題点:作業エリアと通路の境界が不明確
  • 対策
    • 通路:黄色ライン
    • 作業エリア:白色ライン
    • 危険エリア:赤色ライン
    • 横断歩道:ゼブラ模様

5. 照明不足による視認性低下

  • 失敗例:全体照明のみで局所的に暗い箇所が発生
  • 問題点:薄暗い場所での接触・つまずき事故
  • 対策
    • 通路面照度:最低100ルクス以上
    • 交差点:150ルクス以上
    • 階段部:200ルクス以上

6. 避難経路の物品保管

  • 失敗例:「一時的」と言いながら避難通路に在庫を置く
  • 問題点:緊急時の避難遅延、法令違反
  • 対策
    • 避難通路は絶対に物を置かない「聖域」扱い
    • 定期巡回チェック(週1回)
    • 違反時のペナルティ明確化

7. 段差・凹凸の放置

  • 失敗例:配管カバーで2cm段差があるが「慣れれば大丈夫」
  • 問題点:つまずき転倒事故の温床
  • 対策
    • 5mm以上の段差はスロープ設置
    • やむを得ない段差は黄色テープで明示
    • 定期的な床面点検(月1回)

8. ミラー・警告装置の不足

  • 失敗例:見通しの悪いカーブに何も設置せず
  • 問題点:出会い頭の衝突事故
  • 対策
    • カーブミラー設置
    • 音声警報装置
    • 回転灯の設置
    • 床面に「徐行」標示

9. 新人教育の不徹底

  • 失敗例:「見て覚えて」方式で通路ルール教育なし
  • 問題点:ルール不理解による違反・事故
  • 対策
    • 入社時安全教育(2時間以上)
    • 通路マップ配布
    • OJT期間中の重点指導

10. メンテナンス計画なし

  • 失敗例:ライン引き直しを5年間放置
  • 問題点:標示が消えて境界不明確に
  • 対策
    • 年1回の全面点検
    • 半年ごとの部分補修
    • 破損時の即時対応体制

❓ よくある質問(FAQ)

Q1: 通路幅80cmでは狭すぎませんか?

A: 80cmは法定最低基準です。実際の推奨値は:

  • 作業通路:120cm以上
  • 台車使用:150cm以上
  • フォークリフト:車幅+120cm以上

安全と作業効率を考慮して、用途に応じた適切な幅を確保してください。

Q2: 既存工場で通路幅を広げるスペースがない場合は?

A: 以下の対策を検討してください:

  1. 一方通行化で必要幅を削減
  2. 時間帯別の通行ルール設定
  3. 在庫削減でスペース創出
  4. レイアウト全体の見直し
  5. 立体化(2階建て等)の検討

Q3: 通路の色は何色が最適ですか?

A: JIS安全色彩を基準に:

  • 黄色:一般通路(最も視認性が高い)
  • 緑色:安全通路・避難経路
  • 白色:作業エリアとの境界
  • 赤色:立入禁止・危険エリア
  • 青色:指示・誘導

Q4: フォークリフトと歩行者の通路を分けるべき?

A: はい、原則として分離すべきです。

  • 完全分離が理想
  • 不可能な場合は時間分離
  • 最低限、横断箇所を限定
  • 横断部には警告装置設置

Q5: 照度測定はどのくらいの頻度で必要?

A:

  • 初回測定:レイアウト変更時
  • 定期測定:年1回(労働安全衛生法推奨)
  • スポット測定:事故発生時、苦情時
  • 測定は作業面の高さ(床上85cm)で実施

Q6: 通路に仮置きはどこまで許される?

A: 原則、通路への仮置きは禁止です。 やむを得ない場合:

  • 必要最小限の時間(30分以内)
  • 通路幅の1/3以下
  • 迂回路の確保
  • 責任者の許可制

Q7: 災害時の避難通路幅はどれくらい必要?

A:

  • 最低120cm(車椅子通行可能幅)
  • 収容人数100人以上:150cm以上
  • 階段:120cm以上
  • 2方向避難の確保が必須

Q8: 通路の勾配(スロープ)の基準は?

A:

  • バリアフリー基準:1/12以下(約8%)
  • 労働安全衛生規則:30度以下
  • 15度超:滑り止め必須
  • フォークリフト用:10%以下推奨

Q9: 古い工場で法令違反が見つかったら?

A:

  1. 即座に是正計画書作成
  2. 労働基準監督署に相談
  3. 段階的改善計画の提出
  4. 応急措置の実施
  5. 記録の保管(5年間)

Q10: 通路幅の監査でチェックされるポイントは?

A: 労基署の重点チェック項目:

  • 実測値が基準を満たすか
  • 恒常的な障害物がないか
  • 表示・標識が適切か
  • 避難経路が2つ以上あるか
  • 照明が十分か
  • 安全教育の実施記録

まとめ(工場の安全通路)

工場の安全通路については、通路幅、障害物、避難通路など、多くの決まりごとがあります。これらに従うことは必須です。ですが、ただ従えばそれで良い…とはなりません。

本当の安全な通路は、あなた自身(あなたの会社)が、十分に検討して導き出す、独自の規定でしか実現できません。

安全通路に限らず、あなたの会社の工場を良い工場とするには、あなた自身が、その工場に合ったレイアウトを考え、あなたに会社の経営や運営方針に基づいた規定を考えていくことが、とても重要になってきます。

大変とは思いますが、作業者の安全にも関わることなので、慎重に進めていくようにしてください。

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参考

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➡︎ 労働安全衛生規則(第二編 第十章 通路、足場等(第一節 通路等 第五百四十条〜第五百五十八条)

➡︎ 5S活動のアイデア【工場の効率化改善15のヒント】事例あり